前回に続き、「介護が必要な状態になってから、に備える」
2回目の今日は、「法定後見の仕組み」をテーマに書かせていただきます。
大切なご家族が認知症になり介護が必要な状態になった場合、現実的なお話としてやはりお金がかかります。
ご本人に必要な治療や介護を受けてもらうためには、医療や介護に関する制度をフル活用したとしても経済的な自己負担は発生しますし、これまで通りの「生活費」もかかります。そして支えるご家族にも生活や人生があり、やはりお金は必要です。しかし、もしご家族が、ご本人のためにご本人の財産を使おうとした場合でも、ご家族だからといって無限に、無条件に使えるわけではありません。具体的に、たとえばご家族が、「本人名義の通帳に定期預金があり、それを解約して施設入所のために使いたい」「本人が施設に入所することになり、自宅が空き家になり今後住むあてもないので、売却して介護資金にしたい」と希望しているとしても、銀行さんや不動産会社さんは「はい分かりました、やりましょう」とはなりません。なぜならば、いくらご本人が認知症で判断能力がないとしても、ご本人の財産を本人以外の人が勝手に処分することはできず、むしろしっかりと保全される必要が高まるからです。ご本人の財産と権利を守るために、あえてとられる措置なのです。
また、ご本人の判断能力が低下している場合、印鑑や通帳、身分証などをご自分で保管していることによって、悪徳商法などの被害に遭うことも考えられます。ご本人の財産を預かり管理することによってこうしたトラブルを防ぐことが望ましいのですが、一方的にご本人より取り上げる形になってしまうと、ご家族であっても関係がぎくしゃくすることもありえます。
ご家族からすると「本人のために必要なことなのに、やってあげられない」ことが出てきます。 こうなると時に死活問題になります。
こんな時に利用できる制度としてご紹介するのが、「法定後見制度」です。
法定後見制度は、判断能力の低下によって、ご本人自身がご自分の生活や財産を守るための法律行為や財産管理をすることが困難になった場合に、家庭裁判所によって選任された適切な援助者がご本人に代わって法律行為や財産管理など必要な支援をする仕組みです。
おおまかな流れとしては、
①ご本人に判断能力の低下、保護の必要が生じる→②家庭裁判所に申立てをする(※1)→③家庭裁判所による調査や意医師による鑑定が行われる→④家庭裁判所により後見等の(※2)開始の審判がなされ、成年後見人等が選任される(※3)→⑤審判の確定と内容の登記がされる→⑤成年後見後見人等によりご本人のために後見事務がなされる(※4)→⑥後見終了(※5)
となります。
⑤の後見事務により、成年後見人等は、家庭裁判所で指導を受けたとおり、ご本人の財産を預かり、収入や支出を記録し、生活の様子に気を配ります。定期的な事務報告等の義務も課せられています。法的に決められた「ご本人を適切に支援する人」が就くことで、ご本人の生活や財産が守られ、ご家族にとっても安心です。
ただ、この制度、いくつか事前に必ず知っておくべき内容もあります。
(※1)…申立てができるのは、本人、配偶者、4親等以内の親族等です。(親族がいない、申立てを拒否している等の事情がある場合、市町村長が公の立場で行います)申立ての際に必要な書類が大変に多くあり、作成や請求などに時間がかかるものもあります。
(※2)…ご本人の判断能力の程度により、「後見」「保佐」「補助」の3つの類型に分かれます。補助→保佐→後見の順に判断能力がより困難な状態です。補助や保佐の場合、ご本人の残存能力や権利の尊重のためにも、援助者が支援できる範囲が小さくなります。
(※3)…申立ての際に、「この人に後見人になってほしい」「私が後見人になりたい」という希望は記入できますが、実際にその方が選任されるとは限りません。ご本人の財産状況などを勘案し、最終的に家庭裁判所が選任します。
(※4)成年後見人等に対しては、その請求により、報酬がご本人の財産より支払われます。金額はご本人の財産や業務内容により家庭裁判所が決定します。
(※5)一度成年後見人等が就くと、基本的にはご本人が亡くなるまで(若しくはご本人の判断能力が回復するまで)成年後見人等の業務が継続されます。元々申立てをするきっかけとなった出来事(定期預貯金の解約や不動産の売却など)の目的が達成されたとしても、成年後見人等の業務は終了しません。
その他、成年後見人等はご本人の財産管理と身上監護を目的とした法律行為を行いますが、事実行為は行うことができません(たとえば、介護におけるおむつ交換や身の回りの世話など) また、医療に関する同意権ももちません(たとえば、延命治療の有無の決定や、医療行為(手術など)への同意など)
法定後見制度はご本人に万が一が起こった時に、ご本人の生活や身体、財産を守るために利用できる制度です。
ご本人の判断能力が困難となり、ご本人自身では生活が立ち行かなくなった時、また、支えるご家族側の心理的、体力的なご負担を考えた時に、利用できる一つとして、概要や仕組み自体も含め、こんな制度があるんだということをまずよく知っていただくことが大切になると思います。
「介護が必要な状態になってから、に備える」 今回はPart②「法定後見の仕組み」をご紹介しました。
次回最終、Part③へ続きます。
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