前2回に続き、「介護が必要な状態になってから、に備える」
3回目、最終回の今日は、「任意後見契約」をテーマに書かせていただきます。
2回目でお話した「法定後見」は、ご本人に「頭の不自由」が起こってからその財産や権利を守るために申立てすることができる制度となっていることをご説明しました。
では、ご本人の判断能力が残っているうちに、ご本人の意思で、「将来の財産や権利を誰かに託す」ことができる制度はあるでしょうか。ご紹介したいのが、「任意後見契約」です。
同じ「後見」でも、この任意後見契約制度は、法定後見制度とは仕組みが異なるものになります。
一番の大きな違いは、「契約」であるということです。契約、つまり、当事者の間で、「この人と結びたい」という双方の意思表示の合致があれば結ぶことができます。この「任意後見契約」に関しては、たとえばAさんが、「もしも将来万が一、自分に頭の不自由が起こったら、Bさんに面倒をみてもらいたい」という気持ちがあり、Bさんにも、「Aさんに将来万が一があったら、私が面倒を見てあげたい」という気持ちがあれば、結ぶことがきでます。
流れとしては、
①Aさん(任意後見委任者)とBさん(任意後見受任者)とで、任意後見契約を公証役場で公証人のもと公正証書で締結する
②Aさんに頭の不自由が起こったら、Bさんが家庭裁判所に後見監督人付与の申し立てをする
③Bさんは任意後見受任者から後見人になり、後見監督人の監督のもとAさんの後見業務を行う
この任意後見契約は、同時に「委任契約」も締結しておくことをおすすめします。任意後見契約は、Aさんに頭の不自由が起きてから初めてBさんが申立てをし、後見人としての立場を与えられるものですが、頭の不自由がなくとも、ご年齢とともにAさんに体の不自由が起これば、少なからず何らかのサポートが必要になります。その時、Aさんにはまだ判断能力がある状態なので、Aさんを差し置いてAさんの財産の処分や法律行為までをBさんが行うことはできませんが、たとえば、介護申請や入院や入所の手続き、家賃や光熱費の支払いなどをAさんの代わりにBさんが行うことができるというものです。
どちらの契約も、AさんがBさんに対し、「私に万が一があったら、Bさんにこういうことをお願いしたい、託したい」という内容を「代理権目録」としてあげておく必要があります。
この契約の一番のメリットは、「ご本人のお気持ちや意思、タイミングを大切にできる」ことです。たとえば、ご高齢のご本人を案じ、ご家族など身近な方が、「心配だから、財産を預かるよ」と言っても、ご本人は「はい、お願いします」と簡単には言えないことも多いものです。やはり、通帳や印鑑、お財布など大切なものは、できる限りは自分の手元に置いておきたい、自分で管理したいと思うものです。しかし、体の不自由や頭の不自由をきっかけに、または、不自由がなくても、年齢的な衰えから自分で管理することに対し不安や心配を抱えるケースもありえます。「最近うっかり物忘れが多くなって、大切な物の在処を忘れてしまいそうで…」「言葉巧みにものを売りつけられそうになった」など、「これはもう、誰かにお願いしないと危ないな、怖いな」とご自分のタイミング、意思で、信頼できる相手に託すことができるのであれば、ご本人の納得、安心につながるものだと思います。
また託された側も、「自分はきちんとした契約のもとで動いている」という安心感と責任感をもって、ご本人のために必要なサポートをすることができます。
他に、法定後見との違いでメリットとして、
契約なので、報酬については双方の協議の上あらかじめ決めておくことができる(親族間のケースの場合、無報酬とすることがほとんどです)
段階を踏むことができるので、準備期間を設けやすく、後見人として業務ができるまでの手続きがスムーズになる
などが挙げられます。
反対にデメリットとして、
第三者の目が届きにくい(委任契約のうちは、家庭裁判所も後見監督人も入らないため、ご本人が窃盗や横領などの犯罪に遭うケースが起こりうる)
実際に頭の不自由が起きても、任意後見受任者が後見監督人の申し立てをしないことで、ご本人の財産や生活が守られにくくなる(後見監督人がつくことへの不信感、申し立ての煩わしさなど)
などがあげられます。
近年、核家族化、少子化とともに、身寄りのない高齢者の財産や生活をどう守るかが、社会的課題になっています。
介護を必要とせずに人生の最期を迎えることは一番の理想であり、どなたもが望むことではあります。
しかし、もしも将来万が一、介護が必要な状態になったとしたら、誰に何を託したいか、誰に何をお願いしたいか、どんな生活を望むか、そのために、元気な今のうちに何ができるか、どんな備えが必要か、ぜひ「イメージすること」「想像すること」をしてみていただきたいです。
今回ご紹介した後見に関する制度も、最近では耳にするようになってきましたが、その具体的な仕組みまではまだまだ周知が追い付いていないというのが、私の個人的な感想です。
3回にあたってご説明してきましたが、各制度についてまだまだお話したいことがたくさんあります。
ぜひこの機会に、「後見」について知っていただけたらと思います。
また、適切な指導や管理のもと行政書士が後見について承る、「コスモス後見サポートセンター」という組織もございます。コスモスの活動を通して、行政書士の後見に関わることの意義もあわせて知っていただくきっかけにしていただけたらと思います。
公益社団法人コスモス成年後見サポートセンター (cosmos-sc.or.jp) ☆ぜひご覧ください☆
愛知県内に出張対応します
ご自宅までの出張費
愛知県稲沢市内は無料