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最近では「終活」という言葉も聞き慣れた言葉になってきました。私は終活に関する座談会や講座をやらせていただく際に実際に「あなたにとって「終活」というと何をするイメージですか」と何人かの方にお聞きします。
「生きているうちに断捨離(身の回りの整頓など)をすること!」「自分のお葬式の予約をしておくこと!」などなど、それぞれの「終活」を教えてくださいます。
私見ですが、終活というと、「自分が死んだあとに家族が困らないように何かしらをしておくこと」というイメージをお持ちの方が多いように感じます。もちろん、これも必要な「終活」に当たると思います。しかし、終活というのは段階を踏んだ様々な「備え」を指します。特に私がご紹介したい「終活」には4段階あります。
分かりやすく説明するために、時間を逆にしてご説明していきます。今回は1つ目のご紹介です。
1つ目は、「ご自分の亡き後の相続手続き」に対する備えです。
人が亡くなると、その瞬間に「相続」が発生します。相続というのは、故人様の残された財産(プラス、マイナス、全ての財産を指します(遺産))のうち、相続人間の話し合いにより、誰が、何を、引き継ぐのか、次の持ち主を決めることです。これは「遺産分割協議」と呼ばれるものですが、この遺産分割協議には実は隠れた高いハードルもあります。まずは、「相続人全員での協議」が必要になること。相続人が欠け状態で行われた遺産分割協議は無効になるため、まずは相続人が誰にあたるのか調べる必要があります。普段から家族・親族間で連絡を取り合うような関係であればさほど難しいことではありませんが、連絡のとれない相続人がいたり、家族・親族間が不仲である、故人様に前婚歴がありお子様がいらっしゃる、となると、この相続人を特定する調査、作業は困難なものになります。「そもそも相続人ってどうやって調べるの?」と疑問に思われる方もいらっしゃると思いますが、故人様の出生から死亡時までの連続した戸籍謄本で婚姻歴や縁組歴等を調べ、法定相続人にあたる方の有無、居所などを調べていきます。その方に婚姻歴がなく、お子様もいないとなると相続順位、相続関係が複雑になり、相続人の特定作業はとても時間も手間もかかってきます。そしてもう一つ、この相続人の中に、「意思能力・判断能力がない方、ないとされる方」がいる場合も、遺産分割協議は無効になります。そもそも遺産分割協議は「自分の意思や希望を他の相続人に伝えたり、他の相続人の意思や希望を聞いたりして、遺産について話し合うこと」ですので、そこには自分が相続人であり協議をするという自覚であったり、最終的に協議がまとまった場合は、協議書に署名・捺印も必要になります。
ですので、たとえば頭の不自由(主に認知症)があり意思能力・判断能力ない状態の方や、法律上そのように定義されている未成年者等は、遺産分割協議には参加できず、法的な代理人を立てる必要が出てきます。
高いハードルの2つ目は、財産の内容が明らかでない場合です。先ほども述べましたが、故人様の遺産は、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も含まれます。マイナス、つまり事情があって生前にどなたかからお金を借りていて返済が終わっていないケースや、車や家をローンで購入し、月々返済しているケース、などですが、一番心配されるのが、ご家族が知らないところで故人様がマイナスの財産を持っていた、作っていた、というケースです。家族がそれを把握できないまま遺産分割協議・相続手続きを済ませたはいいが、すでに相続放棄ができなくなってから故人様に多額の負債があったことが発覚した、となると、相続人が不測の負債を抱えてしまうことになってしまうこともあります。
以上の高いハードルのために、相続手続きが進まず、故人様の残された財産の次の持ち主が決まらない、となると、様々な都合の悪いことが出てきますし、時間の経過は、財産の価値の変化、相続関係の新たな変化までもたらす可能性もあります。また、遺産を巡って、家族・親族関係がこじれ泥沼化することで「相続」は「争族・争続」とも呼ばれます。
さて、話の冒頭に戻りますが、ではご自分の亡き後の相続手続で、家族・親族間の無用な争いごとを防ぎ、また何よりも、ご自分の残した財産をご自分の託したい方に託すことができる備え、「終活」の一つが、「遺言を残す」ことです。
遺言の種類や作成時の注意点など詳細はここでは触れませんが(コラム「遺言作成」を併せて参考にしていただければ幸いです)、法的に有効な遺言があれば、原則として遺産分割協議を経ることなく、遺言通りに財産の分配がされます。
相続人全員による話し合いが必要なければ(遺産分割協議が必要なければ)、相続手続きに関して時間や手間は随分省くことができると考えます。
「遺言」のお話をさせていただくと、「自分には遺言を書くような財産なんてないから」とか、「なんだか堅苦しい」「大変そう」といった感想が聞かれます。しかし、これは終活全般に言えることですが、遺言作成は、ご自分の築いてきた人生や財産と向き合い、次の担い手に託すという大変重要な役割を持っています。ご自分の大切な思い入れのある財産を確実に次世代に繋ぎ、また、残されたご家族の無用な争いごとを避けるためにも、終活の代表格である「遺言作成」をおすすめしたいと思います。
次回は2つ目、「死後事務委任」についてのお話になります。
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