「はじめまして、後見人です!」 その⑥
今回は後見人の実際の業務についてのお話です。
さて、申立てを経て家庭裁判所より後見開始の審判が下りると、後見人に「あなたが後見人に選任されましたよ」という通知、「審判書」が届きます。ただ、この時点ではまだ審判が下りたことのお知らせであり、実際にこの審判が確定するまでには、2週間の不服申し立て期間(即時抗告)が設けられています。この期間内に家庭裁判所より何らかの連絡がなければ「審判確定」となり、後見人はようやく後見業務に着手できます。先にご説明した通り、後見人の業務は、被後見人の「身上監護」と「財産管理」です。意思・判断能力を欠いた被後見人を代理して法律行為を行います。実際の業務として、被後見人の預貯金の管理や、介護や医療サービスを受けるための申し込みや契約、かかる費用の支払いなどが挙げられます。
後見人の業務はあくまでも法律行為です。したがって被後見人の身の回りのお世話(直接的な介護)等の事実行為や、養子縁組、婚姻や離婚届の提出といった身分行為は行えません。また、実際の後見業務において大きなポイントになるのが、後見人には医療に関する同意権がないということです。具体的には、被後見人の手術等の医療行為への同意はできませんし、延命措置の中止や拒否を選択・判断することもできません。他にも、保証人や身元引受人になることもできませんし、被後見人と後見人との間で利益が相反する行為(たとえば、後見人がお金を借りる際に被後見人名義の不動産を担保にする)も禁止されています。
こうして挙げてみると、被後見人に対し後見人ができることはごくごく限られているように感じられる方もいらっしゃるのではないかと思います。実際に「後見人がついたところで何をしてもらえるの?」「後見人に何ができるの?」と直球の質問をいただくこともあります。事実行為という面では、被後見人に必要な介護・医療サービスを提供できるようケアマネや福祉関係者に報告・連携・相談し、要介護認定の申請や介護サービスの申し込み、契約、必要な支払いを行う、
医療に関しては、被後見人の親族と連絡をとり相談する、主治医や医療関係者と連携する、場合によっては身元保証会社の利用を検討し申し込む、等。また、後見人の義務として、家庭裁判所への定期的な報告も行います。原則として年に一度、被後見人の生活の状況や、支出や収入、財産の状況等をまとめ、報告書として提出します。他にも、たとえば大きな財産の処分(不動産の売却等)を検討する際には家庭裁判所に許可を得る必要がありますし、多額の臨時の収入や支出があった場合も連絡する必要があります。
個人的には、後見人は、被後見人に必要な支援を受けていただくための橋渡しのような立場ではないかと感じています。
法律上では後見人の業務は大枠として決められていても、被後見人の置かれている状況や環境、送っている生活はそれぞれで、日々の生活時々で起こる課題や問題もそれぞれです。すべてにおいて法律で、「こういう場合はこうしなさい」「ああいう場合はああしなさい」と事細かに決められてはいません。つまり、「何が起こるか分からない」現実に具体的に備える、実際に起こった時に迅速に対処する、そのためにも、被後見人を取り巻く関係者が一丸となる必要があるとつくづく感じております。
今回は後見人の実際の業務についてのお話でした。次回は「はじめまして、後見人です!その⑦最終章~被後見人をより良く支援するために~まとめ」になります。
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