コラム
- 不動産相続登記義務化に伴って。
- <div>※写真は本文の内容とは関連ございません。</div><div><br></div>私の両親は70代後半。まだまだ元気でいてくれるのですが、私が終活を専門としていることもあり、無言(または有言?)の圧力からか、最近は自分たちの将来について考えることが増えたようです。<div>先日のこと。父から父の所有している土地について、本当に自分の名義になっているか心配だと相談がありました。</div><div>父は男3人兄弟で、父の父(以下、祖父)に相続が発生したのを機に、土地を相続しています。ただ、父は次男ということもあり、祖父と同居していた長男夫婦が相続に関する手続きはきっとしてくれたのだろうが、昔のことで覚えていない、とのこと。今年度から不動産の相続登記が義務化されたとのニュースを見て、今耕作している畑が、間違いなく自分のものになっているのか不安になったようです。私は父からの相談を受け、早速法務局の支局で、父の不動産について全部事項証明(不動産登記簿謄本)を取得しました。父の心配は杞憂に終わり、祖父が亡くなった以来自分のものとして使用、管理してきた土地は全て父の名義になっていました。念のため、自宅の宅地と建物についても調べましたが、しっかりと父名義でした。父はもちろんですが、母も私も一安心しました。</div><div>父と話をして感じたのは、父の世代には、「長男が家督を継ぐものであり、親の残した財産は長男が相続するもの」という考え方が少なくともどこかしらにあったのではないか、ということです。特に父の生まれ育った地域は田園風景広がるのどかなところ。今では時代の変化とともに少しずつ変わってきましたが、町内や地区の行事、風習、慣習など古くからのしきたりのようなものが根付いています。そんな中で、個々人や親族内における先祖代々のならわしも然りなのではないでしょうか。この目まぐるしく変わる世の中において、20年前、30年前と今とでは、確実に様々なことが変わってきています。少子化に伴う核家族化、医療の発展に伴う平均寿命の延びなどは、故人様亡き後の相続とも密接に関わってくるのではないかと考えます。</div><div>少し話はズレましたが、とりあえず、父の不安の一つだった不動産の登記と所有については、今のところ名目ともに大丈夫ということが分かりました。</div><div>先ほども書いたように、今年度から不動産相続登記が義務化されたことに伴い、「何年か前に相続したはずの土地が自分の名義になっているかがはっきりしない」というご相談をいただくようになりました。</div><div>このような場合には、ぜひ該当不動産の全部事項証明を取得してみてください。不動産の所在や権利関係(所有者や抵当権の有無など)が記載されていますので、ご自分の名義になっているか調べることができます。全部事項証明は、お近くの法務局の窓口で取得することができます(不動産所在地の管轄の法務局以外でも可能です)また、法務局ホームページよりオンライン申請も可能です。また、この全部事項証明はその不動産に権利関係のない第三者でも取得することがきます。</div><div>登記に関する業務は司法書士の業務となり、行政書士が登記申請書類等を作成したり代理で申請することはできません。しかし、行政書士は連携する司法書士をご紹介したりなど、調査や手続きをよりスムーズに行うための橋渡しをすることができます。ぜひお役立てください。</div>
- ~故人様の人生や想いを繋げるためにも~
- <div>令和6年4月から、不動産相続登記が義務化されます。 <br></div><div><div>現在日本には、相続によって土地を相続したのにも関わらず、登記が適正にされない、されなかったがために、登記簿を見ても持ち主が分からない、「所有者不明土地」が増加しています。令和2年のデータになりますが、日本全国のこのような土地をすべてくっつけたとすると、その広さは国土の約24%、九州よりも広い面積になると言われています。</div></div><div>この所有者不明の土地は、様々な弊害をもたらします。管理がされないことにより草木が生い茂り、放火や不法投棄などの犯罪の温床になったり、景観を損ねる、衛生上の問題等も発生します。行政としては、持ち主の許可や承諾がなければ勝手にさわることもできず、その持ち主を特定したくても、連絡がつかない、誰だか分からない…こういった悪循環が大きな社会問題になっています。そこで、「相続で不動産を取得した場合には、しっかり登記をしてくださいね。これをしないと場合によっては罰則もありますよ」という新たな決まりができました。</div><div>さらに、これは昨年令和5年4月からすでに始まっていますが、具体的相続分の割合による遺産分割の基準にも制限がかけられています。これは、「各相続人が持つ相続に関する権利の一部は、原則として相続発生から10年経過すると、遺産分割協の中で主張できなくなりますよ」というものです。遺産分割協議では、故人様の残した財産のうち、誰が、何を、どれだけ引き継ぐかを話し合いで決めていきます。その中で、「私は(故人様の生前に)介護を一手に引き受けたのよ」「あなたは(故人様の生前に)たくさん援助を受けていたわよね」など、互いに主張したくなる場面もあるかもしれません。民法ではこれを「寄与分」「特別受益」として明文化していますが、こういった「相続人の持つ権利」を協議の中で主張できる「期間」に制限を設けたのです。確かに、故人様亡き後に、相続人間でいつまでもこんな主張を繰り返していては、相続は完結せず、いつまでも「次の新しい持ち主」が決まらないですね。</div><div>故人様亡き後に、故人様の所有していた財産が持ち主を失い、宙ぶらりの状態に長く陥ることを、国は法律を通して防ぐ方向で動いています。</div><div>故人様亡き後、その財産はいったんは相続人全員の「共有」の状態になります。しかし、この共有「みんなのもの」の状態が長く続くことで様々な不都合が出てくることもあります。それは相続人間だけの問題にとどまらず、将来的には最初のその相続には無関係だったご家族や社会にまで影響することも考えられます。</div><div>何より、故人様の人生、想いがつまった「財産」がうまく引き継がれないことで、その価値が生かされないこと、思わぬ</div><div>トラブルやもめごとの原因になってしまうのは、大変残念でもったいないことです。</div><div><br></div><div>人が亡くなると、葬儀や事務手続きなど、残されたご家族には、やらなければならないことが山積みです。その中でも相続手続きは相続人のその後の人生や生活に影響する大きな出来事だと考えます。故人様亡き後も、時間は止まってはくれません。</div><div>大切な方を亡くされ、喪失感や悲しみの中にある方の心や体のご負担が少しでも軽くなるように、私達専門家に相談してみるという選択肢もぜひ検討いただけたらと思います。</div><div><br></div><div><br></div>
- 姿はなくても
- 来春挙式する予定の息子から連絡があったのは秋のこと。挙式で新郎新婦の父親向けにモーニングコートの貸し出しがあり、予約が必要とのこと。「借りるよね?」と確認の内容でした。母の黒留袖があるので新郎の母である私は当日それを着ますが、モーニングコートはさすがにないよね…借りるしかないか、と考えていましたが、夫に相談すると、「…あるかもしれない」と驚きの一言が!<div>私はモーニングコートと聞くとお尻のあたりがバッタのような形をしていて(すみません、燕尾服と書くだけあって、燕の尾なんですね、あとから知りました)テレビの中で皇族の方が着ているイメージだったので、一般的な家庭で常に用意されているものではないイメージがありました。しかし、夫の亡き父のモーニングコートがあったのです。</div><div>夫のきょうだいは女性ばかりで男性は夫だけなので、義父亡き後、義父の着用していた衣装のほとんどは夫が引き取っています。義父はとてもおしゃれだったようで、オーダーメイドであつらえたであろうものもたくさん。きっと着た後もきちんとクリーニングに出したり、義母がお手入れしていたのでしょう。</div><div>とはいってもモーニングコートの出番はそれほど多くはなかったはず。主を失ってからはいつの間にか処分されたかもしれないと、夫も「もしかしたら」くらいのつもりで義母に聞いてみたようでした。</div><div>義母は夫から聞かれて、すぐに自宅内の思い当たるところを大捜索してくれた様子。翌日に義母からモーニングコートを受け取った夫の姿を見た時は、「普通の家にこれがあるんだ!」などと失礼極まりない言葉を発してしまいました(奥田家の皆様、大変申し訳ございませんでした)</div><div>義父のモーニングコートに被せられたクリーニングのビニールは所々破れて変色していましたが、幸いにも中身は虫食いも色褪せもなく無傷! 初めて手に取ってマジマジと見ましたが、燕の尾の上着に、縦縞模様のズボン、重厚感があり、格式の高さをうかがえます。</div><div>上着は肩幅も袖も裾もピッタリでした。次にズボンに足を通して裾を見ると、右と左で長さが若干違います。夫に聞くと、「親父は昔から左右の足の長さが違い、持っているズボンはすべて裾直ししていた」と。「洋服はほとんど○○というお店で買っていた、そこは(親父の)弟が勤めていた関係のお店で…」などなど、その後もズボンを履いたまま、夫から亡き義父の話をたくさん聞きました。義父は私が嫁ぐ前に亡くなっているので、私には義父との思い出はありません。しかし、普段は私の話の聞き役である夫が(というより一方的に私がしゃべるので)、珍しくよくしゃべるのです。</div><div>あまり亡き父の話を自分からする夫ではありませんが、以前何かの時に「親父が亡くなった時は、これからは聞く人がいなくなるな、かばってくれる人がいなくなるなって…」とその時に感じた本音を話してくれたことがありました。その言葉に、夫にとって義父がどれほどの存在だったのかということが垣間見えた気がしました。亡き父のモーニングコートとともに色々な思い出がよみがえったのでしょう。夫はとてもうれしそうでした。</div><div><br></div><div>一着のモーニングコートが、こんなにも穏やかで懐かしい思い出と楽しい会話を運んできてくれました。姿はなくても、義父は夫の中に生きているということを実感しました。そして、義父との思い出を夫が語ってくれることで、私も義父を近くに感じることができました。こんなにも素敵なモーニングコートを仕舞っておいてくれた義母にも感謝です。</div><div>『「相続」を「争族」「争続」じゃなく、「想族」「想続」にしたい』行政書士を目指した初心を思い出させてくれる大切なエピソードになりました。</div><div><br></div><div>もうすぐお直しに出していたものが出来上がって戻ってきます。上から下まで着揃えた夫の後ろ姿はきっと、義父そのもの。挙式当日よりも前に、義母に夫のモーニングコート姿を披露したいと思います。</div>
- ~母の三面鏡から思うこと~
- <div>「遺産」とは、亡くなられた故人様が残されたすべての財産のことを指します。</div><div>遺産=財産、と聞くと、「お金」のイメージが強いかもしれませんが、ここでは、預貯金・現金といったお金だけではなく、故人様が残したもの、全て、が遺産となります。</div><div>「全て」なので、プラスの財産だけではなく、例えば、故人様が生前にご事情があってどなたかからお金を借りていた、とか、車をローンで支払っていた、となった場合の、マイナスの財産も含まれます。</div><div><br></div><div>私ことですが、私の母は、「私が死んでも、もめるようなだけの物なんてないから大丈夫!」とよく笑います。</div><div>しかし、私にはある心配事があります。</div><div><br></div><div>母には毎日使っている三面鏡があります。この三面鏡、母が嫁入り道具の一つとしてもってきたものらしいのですが、私よりもはるかに年上なはずなのに、とても状態がよく(昔のものはさすがですね)、使い勝手も抜群。</div><div>子供のころは、自分の容姿が三面の鏡に映し出されるのに恐怖を感じていたこともありますが、今となれば、私が欲しい、母のものの一つ。しかし、ある時、私の姉妹も同じくこれを狙っていることが判明!そして、最近では年頃になった娘が母に直接おねだりしていたことも判明!</div><div><br></div><div>将来、母に万が一があった時、この人気の三面鏡が誰のものとして引き継がれるかは分かりませんが、どうしても欲しい!と互いに誰も一歩も譲らなければ、たった一つの三面鏡の為に、姉妹や娘とけんかになるのかな、なんて心配なのです。</div><div><br></div><div>先に使わなくなるであろう母としては、「誰かが使ってくれればうれしい」くらいにしか思っていないかもしれませんが、逆に言えば、母の次の持ち主が決まらないということは、この三面鏡はその役割を果たせず、お蔵入りになってしまうかもしれないのです。それではこの三面鏡の価値は全くなくなってしまいます。母の人生のつまったものだからこそ、母への想い、母からの想いを大切につなぎつつ、使ってくれる誰かを決める必要があります。</div><div><br></div><div>これはあくまでも私ことであり、極端な例かもしれませんが、故人様が残されたすべての物には、故人様の人生がつまっています。遺産分け=遺産分割協議は、必ず相続人全員による話し合いが必要です。</div><div>そしてその話し合った内容を書面にしたものが遺産分割協議書であり、そこに相続人全員の署名・捺印(実印)がされることで、初めて有効なものとして扱われます。</div><div><br></div><div>「故人様の残した財産を、次に誰が引き継ぐのか決める」</div><div>これには、まず故人様の人生や想いに触れることが大切になるんじゃないかな、と私は思っています。</div>